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YAMAHA

大村 寛子 様
ヤマハ株式会社
執行役員 ブランド戦略本部長

Best Japan Brands 2024
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

この1-2年を振り返ってみて、御社の事業やブランドにとってどのような年でしたでしょうか。

昨年は、コロナ禍での巣ごもり需要が終了し、ピアノなど鍵盤楽器の販売が落ち込むなど、業績がドラスティックに変化しました。主な原因は、中国での売り上げが減少したことです。受験戦争の過熱に対応した中国政府による学習塾の規制がピアノ教室にも及んだという事情があるのですが、消費者の意識がモノの所有から体験重視へと大きく変化しました。
このような消費行動の変化は中国だけではなく世界的な潮流で、これからはモノから体験への変化に確実に対応していかなければならないと実感した年でした。

組織や事業全体として (担当部門として)、対応する領域や範囲はどのように変わってきているでしょうか。

消費行動の変化を超えてヤマハブランドが支持されるためには、新規事業の領域も含めた次のビジネスポートフォリオづくりが必要になっています。
そのカギとなるのは、「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」に特化した、再現性の低い体験価値を生み出すことであり、顧客との対話による共創が必要だと考えています。

想定を越える社会や人々の変化に対して、事業として、ブランドとしてどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

楽器を購入して終わりではなく、購入後も接点を持ち続けていただくことで、顧客のLife Time Valueの最大化を図りたいと考えています。
そのために昨年、ミュージックコネクト推進部を創設し、リモートレッスンやリモートセッションができるアプリやサービスを開発してきました。
今年の早いタイミングで、より多くの方がクリエイティビティを発揮して、音楽を楽しんでいただけるような新サービスをスタートする予定です。

社員の働き方や意識は、どのように変わったと感じているか。ワークライフバランス、効率性やエンゲージメント、社内コミュニケーションといった社内カルチャー、社員の価値観などに、どのような影響があり、それにどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

リモートワークや遠隔地勤務などの制度は充実していますが、本来リアルであったら生まれるかもしれないエンゲージメントが低下していることを懸念しています。
リアルな接点が少なくなっている分、Web社内報などを駆使して社内のコミュニケーションを促進し、社外に対しても社員の活動を広く発信することで社員のロイヤリティを高めています。グローバルに対しても、コロナを機に社長表彰をオンラインで発信するなどブランドに接する機会を増やしました。

パーパスや経営の理念、ビジョンなどの重要性が論じられていますが、それらを事業活動の中で、どのような形で活かしていらっしゃるでしょうか(実体化に向けてどのような取り組みをされているでしょうか)。

当社の企業理念「感動を・ともに・創る」は事業活動と密接に結びついていて、元々そういう活動をしたい社員が集まっているので、その意味では様々な取り組みを展開しやすい環境にあります。昨年12月に障がいのあるピアニスト3人を迎えて開催した「だれでも第九」コンサートの配信には約21万人のアクセスがあり、当社独自のAI技術を使って世界中に感動を広げることができたと、社員にとってもブランドの存在意義を再認識する機会となりました。
ブランドプロミス”Make Waves”の策定以降、ブランド活動についてはトップダウンで細かく管理してきましたが、社員の理解が十分に進んできたので、今年からは自主性を重視する方向にガバナンスの仕組みを変えています。