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Japan Branding Awardsから考察する 新・ブランド戦略論

【Vol.4】ブランディングに求められるのは柔軟で解釈の「余白」を持たせた新しいアプローチ

2024年より大幅アップデートされた「Japan Branding Awards」。評価指標(クライテリア)を根本から見直して行われた「Japan Branding Awards 2024」は盛況のうちに幕を閉じた。

連載最終回となる本稿では、インターブランドジャパン シニアエグゼクティブディレクター 畠山 寛光が「Japan Branding Awards 2024」を通じて感じた、日本企業に求められるブランディングのあり方、今後目指すべき方向性について振り返る。

固定的なブランディング手法からの脱却が不可避

まず、アップデートされた「Japan Branding Awards 2024」にご応募を頂いたすべてのブランド様に、改めて深く御礼申し上げます。2018年から毎年継続して開催していたアワードを、1年間お休みさせていただいてまで、大きな変革に取り組んだのは、インターブランドジャパンとしても強い意志がありました。

激変する世の中において、強い危機感と言いますか、まず我々自身が変化すべきではないかと感じました。2024年12月に発行した書籍『経営としてのブランディング』(日経BP 日本経済新聞出版)でも述べていますが、5年先も予測できない混沌とした社会において、従来の固定的なブランディング手法を守り続けていても、気づいたら本来目指すべき状況からかけ離れてしまうのではないか、それが本当に正しいブランディングなのか、を自己反省も含め、当社のメンバーで徹底的に議論しました。

結論、ブランディングそのもののあり方を再構築するべき、という結論に至り、「Japan Branding Awards」をアップデート、新しい6つの評価指標が定義したわけです。手前味噌ですが、「Japan Branding Awards」の価値は、結果だけではなく「ブランディングのプロセスで行われている取り組み」を評価する点にあります。根底にあるその考え方はそのままに、評価指標をアップデートしました。

新しい6つの評価指標に戸惑われたブランド様も多かったかもしれませんが、趣旨に賛同頂き、B2B/B2Cに関わらず、様々な魅力的な取り組みの応募がありました。

「Japan Branding Awards」の審査には、外部の審査員として新しいメンバーをお迎えし、それぞれの専門領域の視点でのインプットを受け、闊達な議論を行い受賞ブランドの絞り込みを行いました。最終的に、GOLD、SILVER、BRONZEに9ブランドが選考されたわけですが、受賞されたブランド以外にも多くの魅力的な取り組みがあり、我々も多くの刺激を受けました。

変化の激しい時代だからこそブランディングに解釈の幅を持たせる

日本を代表するブランドリーダーと有識者の方々にお集まりいただき、これからのブランディングについて議論した「共創セッション」や「Japan Branding Awards」の審査の過程において印象的だったのは、「余白」というキーワードが多くあがったことです。また、各ブランドともこれまで以上に変化に対して、アジャイルな取り組みが目立っていたことも印象的でした。

従来のブランディングにおいては、「決めたものをしっかり守る」「解釈の幅を持たせない」という考え方がありました。しかし、変化の激しい時代には、逆に解釈の幅、すなわち「余白」を持たせることにより、正しい文脈、正しい意味で、ステークホルダーに根源的な想いや価値が提供できる、という意見が多く出されました。

過去にとらわれすぎることなく変化に柔軟に対応しながら、時に壊す。単に企業が一方通行に発信するのではなく、ステークホルダーを巻き込みながら、共感を生んでいく。日頃ブランディングに真剣に向き合っている皆様から、こうした事例やお言葉が多く集まったことから、時代の変化を明確に感じましたし、我々にとっても大きな学びとなりました。

「長い時間軸を経て残っているもの」を大切にするブランドは強い

「Japan Branding Awards 2024」から、授賞式も大きくアップデートしました。これまでは、受賞企業のみをご招待し、表彰させていただいていた形式から、過去の受賞ブランド関係者や新たな評価指標で審査頂いた有識者、ブランドリーダーの皆様にも参加頂き、これまで以上に開かれた「Japan Branding Awards」を目指しました。

連載第2回、第3回でもご紹介したGOLD受賞ブランドによるパネルディスカッションは「Japan Branding Awards」で初めての取り組みでしたが、参加頂いた皆様から大変好評でした。

議論のなかで「うねり」「破壊」「怒り」といったキーワードが、パネルディスカッションで新たに飛び出したことは、私自身も驚きでしたし、新たな気づきとなりました。一方で、受賞ブランドに共通していたのは、創業時の理念など、長い時間軸を経て残っているものを大切にされていたことです。社員やステークホルダーの心を揺さぶるものや共感を生む取り組みに立脚しているブランドは強い、と改めて感じることができました。

近年、生活者などステークホルダーとの関係性を重視する点は、ブランディングにおける重要なポイントです。個人的に興味深かったのは、GOLD受賞ブランドは「巻き込み」において、自らがターゲットを決めて仕掛けるのではなく、共感を生み自然とステークホルダーが集まったという点です。

何かのフォーマットを使うのではなく、欲望や感情を読み解き、アクションをおこしているブランドは、結果として人の琴線に触れるし、人も自然に集まる。パネルディスカッションの司会をしながら、皆様から飛び出すゾクゾクするようなお言葉にとても興奮しました。

唯一無二のブランドリーダーのプラットフォームを皆様と育てていきたい

100のブランドがあれば、100の課題があります。日頃、ブランディングをご支援していますが、ブランドにより定義も取り組みも千差万別です。CI/VIの支援に留まらず、時に新規事業、時に組織改革と、ブランディング支援に求められる幅も年々広くなっています。だからこそ、ブランディングは難しくもあり、経営や世の中を変える大きな力にもなります。

コーポレートブランディング、事業/サービス・商品のそれぞれのブランディングに関わるブランドリーダーが一堂に会する機会は、普段はあまりないと思います。「Japan Branding Awards」では、日々ブランディングに取り組む同志として、意見交換したり、ネットワークを拡げたりできる貴重な機会だと感じています。今後こうしたプラットフォームがさらに強固なものとなり、ご一緒に育てていければと考えております。

「Japan Branding Awards 2024」のパネルディスカッションでは、GOLDを受賞された3ブランドの活動にフォーカスしましたが、参加者の皆様からは、SILVER、BRONZEの取り組みについてももっと知りたいというお声を頂きました。今後のアワードでは、そういったお声を是非活かし、発表の場を設けていきたいと考えています。

「Japan Branding Awards」の次回開催について詳細はこれからとなりますが、今後もこれからも社会や様々なステークホルダーと共創しながらブランディングの進化に取り組んでいきたいと考えています。

もしブランディングについて課題をお持ちの方や、第三者の視点でブランドをアップデートさせたい方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にご連絡をいただければと思います。インターブランドジャパンのメンバーが、いつでも壁打ち相手になりますよ。