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Rakuten

河野 奈保 様
楽天グループ株式会社
副社長執行役員、CMO (Chief Marketing Officer)

Best Japan Brands 2024
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

この1-2年を振り返ってみて、御社の事業やブランドにとってどのような年でしたでしょうか。

Rakutenは70を超える事業を展開していますが、 そのスケールによるベネフィット、そしてエコシステムの強さを改めて実感した数年でした。たとえば4年前に参入したモバイル事業は昨年12月に600万回線を達成しましたが、我々の参入により他キャリアも低価格帯サブブランドを立ち上げるなど流れが産まれ、楽天モバイルのユーザーのみならず、日本全体で4兆円(*1)もの通信費コストが低減されています。 
また、震災などの緊急事態に際して取り組むべき課題として、物流対策や、宿泊施設への支援などに加えて、能登半島地震に見舞われた今年は、元旦から全社を挙げ、ネットワークの正常化も含めて全力でBCP対応に尽力し続けています。みなさまの生活を支えるインフラとなった社会的責任の重さを再認識しています。 

*1:MM総研調査より 

組織や事業全体として (担当部門として)、対応する領域や範囲はどのように変わってきているでしょうか。

「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションは1997年の創業時から変わりませんが、その手段がインターネットだった時代から、AIやビッグデータを駆使する時代へと世界が大きく変革を遂げています。人口減、高齢化という社会課題を抱える日本の経済を支えるのは、AIに象徴されるテクノロジーに他なりません。 
Rakutenはこれまで、ショッピングやトラベル、カードなどのチャネル単位でお客様とコミュニケーションしてきましたが、AIやビッグデータを活用することで、オンラインとオフラインの境目も言語の壁も超え、チャネルや場を問わずにお客様一人ひとりと向き合い、そこにRakutenらしい「おもてなし」というバリューを提供できるブランドとして進化できると考えています。 
私たちは今、「誰にとっても、より住みやすい世界を実現する」ことをめざして、全社を挙げての ”AIナイゼーション(AI化への取り組み)” を猛スピードで進めています。私たちが変化することで、日本経済の再活性化に貢献できることを願っています。 

想定を越える社会や人々の変化に対して、事業として、ブランドとしてどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

OpenAIを戦略パートナーとして立ち上げた新たな社員向けプラットフォーム『Rakuten AI for Employee』も、施策のひとつです。まずはグループ内にセキュアなAI環境を解放し、70事業が日常的にAIを利用し、課題発見や成功体験の共有などを共有することで、理解や活用の促進を図っています。また既にすべての事業のサービスを多言語化するマルチランゲージプロジェクトはスタートしており、それぞれのUXへの落とし込みを含め、対応を加速させています。 

社員の働き方や意識は、どのように変わったと感じているか。ワークライフバランス、効率性やエンゲージメント、社内コミュニケーションといった社内カルチャー、社員の価値観などに、どのような影響があり、それにどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

リモートの効率は理解していますが、それ以上に、面着(対面によるコミュニケーション)の価値、顔を見て仕事をする大切さを再認識しているところです。 
Rakutenは100を超える国と地域の社員が共存するグループです。異文化間のコミュニケーションや理解は、ただでさえ難しいものですが、とりわけワンチームになって課題に取り組んで行くためには、オンラインだけではカバーしきれない部分があります。 
もともとRakutenには、同じ場所で同じゴールを共有し合うことでともに課題を解決していく、シェアリングの文化があります。コロナ禍を経て、これまで以上にその文化の重要性に気付かされました。 

パーパスや経営の理念、ビジョンなどの重要性が論じられていますが、それらを事業活動の中で、どのような形で活かしていらっしゃるでしょうか(実体化に向けてどのような取り組みをされているでしょうか)。

パーパスは社内には浸透していますが、それをどのようなカタチで、世の中へ届けていくのかは、常に課題です。解決策のひとつとして、AI ソリューション「Rakuten AI for Business」を、B2Bクライアント、パートナー各社に解放していきます。これは「AI技術を通じて人類の可能性を拡張し企業の生産性を高め、さらに便利で快適な社会を実現する」という事業ビジョンに基づいたもので、このソリューションを共有していくことで、さまざまな企業の効率・生産性を上げ、共に成長していくことを目指しています。 
こうした事業だけでなく、既存のRakutenエコシステムのすべてにAIを掛け合わせること、また全社員の業務におけるAI活用の推進によって、マーケティング効率の20%増、オペレーション効率の20%増、クライアント効率の20%という「トリプル20」を達成することを当面の目標としています。そして、パートナー企業とともに成長すること、さらには国全体の成長を実現していくことを目指していきます。