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YAMAHA

木下 拓也 様
ヤマハ発動機株式会社
上席執行役員 クリエイティブ本部長 

Best Japan Brands 2024
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

この1-2年を振り返ってみて、御社の事業やブランドにとってどのような年でしたでしょうか。

コロナ禍で人流が制限されたここ数年は、自然の中で遊ぶ当社のプレジャーな商品価値が再発見された面があり、業績は好調でしたが、今年は新しい現実と向き合うことになるでしょう。見えてきた需要に対して、どのようなアプローチをするのかを問い直す年になると思います。

組織や事業全体として (担当部門として)、対応する領域や範囲はどのように変わってきているでしょうか。

カーボンニュートラルに象徴される環境やサステナビリティ、ダイバシティなどの社会課題に対してどんなアクションをとるのか、各事業がどのようにアプローチし、何に対してどのような貢献するのかの再定義を迫られています。ブランドと事業は、相互に切り離せない存在だけに、コーポレートと事業が手を携えて取り組む領域が増えてきました。社会に対して、ブランドの意思をはっきりと示さないといけないでしょう。

想定を越える社会や人々の変化に対して、事業として、ブランドとしてどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

四輪車メーカーは、こぞってEVや社会環境に思考が向いていますが、わたしたちは、そういった変化以上に、変わることのない人間の本質と向き合うべきではないかと考えています。なぜなら、若い人たちの興味が消費社会や経済主義から離れ、人間の本質に向かっていると感じるからです。人間がどんな価値を幸せと感じるのか、どうしたら「生きる」を実感できるのか。そこにブランドがどう応えていこうとしているのかをメッセージ化することで、YAMAHAブランドの価値の再定義をしなければならないと思っています。
そのトライアルとして、昨年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2023」の出展テーマは“「生きる」を、感じる”。ヤマハ株式会社の協力も得て、ふたつのYAMAHAの先進技術を活かしたステージ演出を試みました。

社員の働き方や意識は、どのように変わったと感じているか。ワークライフバランス、効率性やエンゲージメント、社内コミュニケーションといった社内カルチャー、社員の価値観などに、どのような影響があり、それにどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

わたしの所属するクリエイティブ部門では、今年はエンゲージメント率が10%以上拡大し、70%以上の肯定率になりました。その最大の要因は、コロナ後、会社を「コミュニケーションの装置」と定義し直し、出社の機会を増やすよう社内を促したこと、併せて社員に対する評価判断基準をオープンして社員のスキルを可視化し、社員にとっても納得性の高い評価ができるようになったことにあると感じています。
当初は出社に対してネガティブな反応も多かったのですが、コミュニケーション量が増えたことで、結果として、若い人ほど成長のスピードも生産性も上がり、いまでは自発的に出社する人が増えています。コロナ前は、漠然と会社に来ていたのが、コロナを経て、会社に来る意味、一ヵ所に集まる意味が明解になったのだと思います。

パーパスや経営の理念、ビジョンなどの重要性が論じられていますが、それらを事業活動の中で、どのような形で活かしていらっしゃるでしょうか(実体化に向けてどのような取り組みをされているでしょうか)。

ヤマハ発動機の企業目的である「感動創造」は、社員にはしっかり浸透しているのですが、抽象的で、パーパスのような明解さはありません。外部に対しては、具体的なストーリーやアクションにつなげて見せることが必要でしょう。さらに、活動の集合体として、たとえば我々の主要事業の収益がクリーンウォーター事業など貢献型事業に対する投資や貢献につながっているようなエコシステムを示せるといいですね。
感動にはいろいろな種類がありますが、YAMAHAらしい感動とは、心と身体性の両方が伴う感動ではないかと考えています。わたしたちは、解析だけでモノをつくっていません。自分たちも楽しむこと、ひと手間を惜しまないことで生まれる手触り感や、デザインに時間をかけることから生まれる味わいを大切にしています。AIやバーチャルを利用するにせよ、ものづくりとしての「YAMAHAの手」にこだわることに、もっと自覚的になろうと考えているところです。