We give our clients the confidence to make Iconic Moves

豊かな知性が、新たなブランド資産になる。

私たちは今、ブランドが価格や製品といった従来の差別化レベルを超えて、「エシカル(倫理的)な存在」に進化する過程を目の当たりにしています。モノやサービスとは異なり、そのバリューはデザインや装飾でごまかすことは出来ません。ブランドが信頼性を獲得し人々を惹きつけるためには、今だけでなく将来にわたって真実を積み重ねる必要があります。

つまり必要なのは、パーパスを定めステートメントに示すだけでなく、それを行動で表すことなのです。これは、過去10年間で最大級のパラダイムシフトであり、今後も続いていくものです。そして、成功の鍵は顧客を深く観察し、理解することにあります。

価値観主導型のアプローチで、模範生とも言えるブランドにパタゴニアが挙げられます。パタゴニアは、製品の持続可能性について語るだけではなく、あらゆる企業活動を「エシカル(倫理的)な存在」であることに結びつけて持続可能性を追求しています。

このように信頼に値する価値観に根ざしたポジショニングを持つことは、ブランド体験や提供するものの幅を広げることにもつながります。ブランドは、顧客を中心にオープンなエコシステムを作ることができ、ブランドに対する次元の違うエンゲージメントを可能にするのです。

しかしながら、ブランドがパーパスドリブンに移行する際には、ブランドの価値観に同調しない顧客ベースの一部を失うリスクに直面します。とはいえ、これはリスクであると同時に、一貫性を許容し残ってくれた顧客とより深いつながりを築くチャンスでもあります。

たとえばグッチでは、社内外を問わず、すべてのプロセス、取り組み、行動は、自社の価値観に基づき、ふるいにかけられます。長期的な開発プロセスを経た事業活動であっても、グッチの理念や価値観、パーパスに合わないという理由で中止となったケースも少なくありません。

人々のブランドに対する期待と認識は大きく変わりました。人々はもはや、イージー、ベーシック、クールなどの価値観に安住してはくれません。ブランドを進化させる鍵は、変化と、失敗を恐れることなくイノベーションを追求する姿勢にあります。たとえビッグブランドであっても、大きな利益を追求するためには、早く失敗して、そこから学びを得る必要があるのです。

LVMHのような巨人が、小さなブランドにチャンスを与えているのも、小さなリスクで、早く学びを得るためです。そしてルイ・ヴィトンのように、その学びをより大きな成長へつなげようとしているのです。ホールディングカンパニーの目的は、業界、カテゴリー、サブカテゴリーを問わず、ニッチを最大限にカバーすることであり、これらのニッチはすべて、「自己表現」という基本的なニーズを共有しています。

かつてラグジュアリーブランドは、経済力や社会的地位を伝えるための手段でしたが、今では人々が本来の自分を表現するためのものとなっています。それを見極める豊かな知性こそが、新たなブランド財産です。人が、あるブランドを購入し、他のブランドを購入しないのは、その人が何者で、何を信頼し、何に価値を置いているかを周囲の人々に理解してもらいたいからです。どれだけ裕福であるかを示したいわけではありません。

継続的な成功を手にしているブランドは、コミュニティを通じて構築され、成長しています。昨今、デジタルネイティブブランドが、同分野の既存ブランドを崩壊させている理由もここにあります。同様に、ラグジュアリーブランドは、カスタマーセントリック(顧客中心主義)に努め、人々は、モノやサービスではなく、ブランドの価値観や哲学を買ってくれる(あるいは買ってくれない)ことを理解しなければなりません。

だからこそ、バレンシアガやグッチは、優良顧客としての購買力を持たないにもかかわらず、ブランドのコミュニティを形成する重要なターゲットである人々のための体験をデザインしているのです。

あなたのブランドの世界に参加する人々をすべて顧客ターゲットとして見るのではなく、ブランドのアンバサダーや語り部であると理解することが重要です。人はブランドよりも、はるかに強力な存在なのです。

サブカルチャーをマイクロターゲットにしてお金を稼ぐ手法は、業界の未来を考える上で興味深い視点です。LVMHやケリングのようなビッグブランドのポートフォリオマネジメントでは、大ヒット商品以上に、文化や価値観をベースにした比較的小さなコミュニティを対象にしたニッチブランドの重要性が、ますます大きくなるでしょう。

これらのグループは、シャンパン、コスメ、ファッションなどをカテゴリー別に購入するのではなく、同じような考えを持つ小さなコミュニティとの関係を深めていくために、確固たる価値観に根ざしたポジショニングを持つブランドを購入したり、見いだしたりするのです。

とはいえ、この業界では、顧客がイノベーションを主導することはありません。なぜなら、顧客はブランドがイノベーションを起こして自分たちを驚かせてくれることを期待しているからです。顧客は、自分たちが本当に必要としているもの、望んでいるものが何かを知っているわけではありません。ブランドのクリエイティビティに、それを期待するのです。

Translated and edited from “INSIDER VIEW – Knowledge wealth is the new Capital wealth”: https://interbrand.com/thinking/knowledge-wealth-is-the-new-capital-wealth/