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Move: into an Arena of Choice – 最適なアリーナに「Move」するために。

テクノロジーに飛躍的な革新が生じるたびに、人類は経済的、文化的、商業的に甚大な影響を受けながらも、時間と空間を再構築してきました。かつてシルクロードが世界で最も重要な貿易路として、物資の流通だけでなく、科学的知見、哲学、人々、文化が東西を行き来するための重要な大動脈だったように、今、私たちが向き合っている「Decade of Possibility(可能性に満ちた変化の時代)」においては、革新的なテクノロジーが、古い制約を取り払い、新しい移動の形を生み出し、空間と時間を改革しています。

このダイナミックで新たな飛躍から生まれたのが、「Move Arena」です。

従来、競合とは、同種の製品やサービスを提供する事業者同士を示すものでした。しかし「Decade of Possibility」において、この概念が通用する範囲は限定的になっています。もちろん、同じような顧客ニーズや日々のルーティーンを取り扱う他のカテゴリーとの競合は、これまでもありました。しかし、これからの競合は、お金や時間といった同一の顧客資源を奪い合うカテゴリーから生まれるようになるでしょう。これは、「産業」から「Competitive Arena(競争アリーナ)」への移行を意味します。

そのポイントを説明するために、ここでひとつの事例をご紹介しましょう。

ビジネストラベルというカテゴリーで、トップブランドであるデルタ航空と並ぶブランドとしては、ユナイテッド航空、サウスウエスト航空、アメリカン航空、ジェットブルーなどが挙げられます。各プレーヤーは、国内出張市場のシェアをできるだけ多く獲得しようと競い合っています。しかし、それだけが競合ではありません。下図の通り、隣接する「Space」を占めるアムトラック(全米鉄道旅客公社)やハイパーループ・ワンが、デルタ航空のビジネスの一部を奪い取る競合であることは、容易に想起できます。

ビジネス出張者の解決すべき課題を掘り下げると、実際には「AからBへの移動」ではなく、「人物Xとの関係構築」、「人物Yとのアイデア共有」、「ビジネスZとの契約締結」の可能性が高く、ここにパンデミック、接続性の向上、コスト削減要求などのコンテキストを重ねると、デルタ航空の競合の最先端部である「Arena」に位置するのは、マイクロソフト(Teams) やZoomなどのビジネスだと推測されるのです。

この事例を極論だと断じる前に、ユナイテッド航空の例を考えてみてください。NASDAQのチャートを見てみましょう。1926年創業、時価総額113億ドル、ビジネストラベルの黄金時代を象徴するこの企業は、2020年夏、創業からわずか17年で時価総額300億ドルに到達した電子署名サービス事業者、ドキュサインにその座を譲りました。

パンデミックによって、出張などの対面での商談を代替するために、ドキュサインの株価は2倍以上になった一方で、出張の元祖である航空会社は、破綻や政府の援助が必要な状態に陥るなど、その存続すら危ぶまれています。ドキュサインのCEO、ダン・スプリンガーは「COVID-19の収束後も、顧客が紙やマニュアルベースのプロセスに戻ることはないだろう」と述べています。

これらの事例が示すとおり、今、私たちが向き合っているダイナミックな状況において、ブランドの大きなチャンスと存続の脅威は、業界の中心にいる競合からもたらされるのではなく、その周辺から来る可能性が高いのです。コロンビア大学ビジネススクール教授のリタ・マクグラスは、「雪は端から溶けていく」「競争は自分の業界の中だけだと思っていると、大きな盲点が生まれる」と指摘しています。

だからこそ、インターブランドの「Arena」は、ジャンルやカテゴリー、ブランドなどの固定観念を徹底的に排除し、顧客の声に真摯に耳を傾け、クライアントの新たな成長機会を見出すことから始めるのです。

「Move Arena」では、NASDAQ同様に、文化、生活、ライフスタイルの変化を観測することが出来ます。パンデミックは、私たちと周りの世界との交流スタイルを変化させました。「Move Arena」において、意思決定は「いかにして私は、人、モノ、サービス、体験を手に入れるか」ではなく、「人、モノ、サービス、体験がどのように私の手元に届くのか」へと変化し、この「Arena」におけるブランドにとって深い意味を持つようになったのです。「Move Arena」を探求することは、人々がブランドとどのように関わっているかを理解することを意味します。

「Move Arena」を主戦場とする企業の存在意義は、A地点からB地点への移動を支援することにあり、その領域は、旅行、海運、自動車、航空、宅配にまで及びます。ここで決定的に重要なことは、人々はふたつの新しい転換点のなかでその変革に向き合っているという点です。

第一に、人々は生活のあり方を根本的に見直しています。第二に、人々はより多くの、そして根本的に異なる方法で移動する手段を手にしました。これらのシフトは、消費者を新しい経験へ、新しい選択へ、新しい休日の過ごし方へと導いています。

多くのビジネスリーダーやブランドリーダーにとって、「Move Arena」を理解することは、さまざまな理由から重要です。以下に5つのヒントをご紹介して、本稿の結びとしましょう。

1. 事実上、すべてのブランドはモビリティ・ブランドでもあります。物理的にも仮想的にも、距離を縮める方法は、あらゆるビジネスモデルに不可欠であり、イノベーションの領域でもあります。あなたのビジネスは、どこで顧客と出会うのでしょうか?そしてそれは、次にどのように変わるのでしょうか?

2. ブランドが人、モノ、サービスを「Move」させる方法は、単なるロジスティクスではありません。それは、顧客の生活においてブランドのプレゼンスを上げ、選ばれる存在に至るまで、顧客との関係を変化させ、成長させる重要な機会なのです。あなたの会社に導入されたEVは、サステナビリティレポート以上に、あなたの会社をよく表しています。昨年、アマゾンはリヴィアン社に10万台の電動配送車を初注文したことを発表しました。

3. 「Move Arena」は、地元のショップから届く宅配便から、リモートワーク、そしてワシントンDCの歩道拡大に象徴される公共空間のあり方の見直しに至るまで、個人の選択から集団の選択へとユニークに広がり、つながっています。同時に、個々の消費者や企業がより有効な対策のために努力している今、「Move」に関する決断は、あなたのブランドの話題性を高めることにも貢献します。例えば、あなたのブランドのショップには、便利さや体験の提供だけでなく、顧客の帰属意識を高め、地域社会に寄与する存在となるチャンスもあるのです。

4. 「Move Arena」を観測すれば、新たなテクノロジーの意味も予見できます。Xプライズ財団CEOであり、起業家としても高名なピーター・ディアマンティスと、ジャーナリストとして2度にわたりピュリッツァー賞にノミネートされたスティーブン・コトラーは、近書「The Future is Faster Than You Think」の中で、ドローンがAI、バッテリー技術、材料科学、ロボット工学、5Gなどをどのように組み合わせているか、説得力のある例で紹介しています。あなたが競争している分野が何であれ、「Move」はあなたのビジネスに重要な示唆を提供してくれるでしょう。

5. 商品やサービスを「Move」させることが業務の中心ではなく、サービスの一部である場合(例えば、作ったものを届ける場合)、「Move」というレンズを通して見ることで、配送方法に基づいて顧客ベースをセグメントする新しい方法をひらめくことができるでしょう。それによって、顧客層に応じた適切な取引形態、効率と親密さの最適なバランスを実現できるかもしれません。さらに、雇用主としては、従業員がどの程度移動するか、つまりリモート、対面、ハイブリッドなどの手段に応じて、ブランドの従業員体験は、異なる方法で設計される必要があることにも気づくでしょう。

どこにでも行ける。何でも手に入る。それがMove Arenaです。

Translated and edited from “INSIDER VIEW – Move: into an Arena of Choice”: https://interbrand.com/thinking/move-into-an-arena-of-choice/