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ポジティブ・ヒューマン・エネルギー:人とのつながりを築くための新モデル

私たち人間には、「つながりたい」という基本的欲求があります。私たちを人間たらしめているものは、より深く詳細に、より多くの方法で、より多くの人やモノとつながろうとする能力に他なりません。

私たちは、人とのつながりの強さが生存の鍵であることを知っています。マズローの法則(欲求5段階説)や、ハーバード大学で80年にわたって続けらてきた人間の幸福に関する追跡調査(Grant StudyとGlueck Study)を例示するまでもなく、密接さや関係性を深めたいと願う意識やソーシャルな交流を望む基本的欲求には、人の健康との因果関係があります。

しかし、テクノロジーの進化が私たちのソーシャルな交流を増幅した結果、ストレス、不安、取り残されることへの恐怖、誤情報も増幅されました。SNSサービスの存在価値は問い直され、巨大テック企業のビジネスモデルそのものに対し、アクティビストたちや議会、そしていつでも使用を中止することができるはずの消費者自身からも無数の課題が突きつけられています。
つながりの交差点ー「人が必要とするつながり」と「人を不安にさせるつながり」の間で、さらには生存とストレスの狭間で立ちすくんでいるのが、私たちの現在地です。では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか?ブランドは、どうやって顧客やビジネスにより良い結果をもたらすつながりを生み出すことができるのでしょうか?

この問いを受けて、インターブランドのHeartbeatチームは、テクノロジーによるつながりの「光」と「闇」の間に横たわる葛藤を探りました。私たちは、消費者グループと専門家グループをそれぞれ集め、テクノロジーに支えられたつながりの過去、現在、未来を旅する一連のスプリントを行いました。私たちはそこで、あるテクノロジーに初めて触れた「驚き」から「未来の理想的なコネクテッド・ワールド」のイメージまで、多くの新しい気づきとアイデアを得ることが出来ました。
今回、「最高のつながり」を調査する中で際立っていたのは、私たちが「ポジティブ・ヒューマン・エネルギー」と呼ぶものでした。端的に言えば、それは素晴らしいつながりによってもたらされる結果です。「ポジティブ・ヒューマン・エネルギー」は人を心地良くさせ、人と人、人とモノ、人とブランドとの絆をより強固にします。
「ポジティブ・ヒューマン・エネルギー」は言うまでもなく、1.ポジティブ、2.ヒューマン、3.エネルギーという3つの要素から成り立っています。ではなにが、ポジティブなもの、ヒューマンなもの、そして良いエネルギーを生み出すのでしょうか?スプリントの結果は、驚くべきものでした。以下に、各要素を分解して「どうすればより良いつながりを築けるか」を探求し、その答えを導き出します。

ポジティブ

ポジティブをつくる最上の方法は、ネガティブを排除すること。

消費者グループ、専門家グループを問わず、圧倒的に多かったのは、テクノロジーを通したつながりが、いかに彼らの人生と彼ら自身を進歩させたかについての肯定的な意見でした。テクノロジーが私たちの生活にもたらす負の側面について語られることが多いメディアの論調とは対照的です。人々は自分たちの生活においてテクノロジーが果たす役割に対し、かなり肯定的であることが再認識できました。
特に洞察に富んでいると感じたのは、被験者たちが自分たちに最も大きな影響を与えたテクノロジーについて語る姿でした。 それは、「最高のテクノロジーはネガティブな要素を排除してくれる」というものでした。 常識に反するように聞こえるかもしれませんが、これは、人々が「驚き」を感じた最初のテクノロジー体験を振り返ったときの、共通の印象です。
たとえばリモコンの登場によって、立ち上がってチャンネルを変えるという「苦行」がなくなり、CDプレーヤーの登場によって、カセットの「苦痛」が解消し、デジタルカメラの登場によって、フィルムの現像を待つという「苦痛」がなくなったというように、彼らは、人とデバイス間の単純な進歩のように思えることに、しばしば言及しました。
あるテクノロジーが登場する前は、「嫌だった」「しなければならなかった」「苦行のようだった」こと……、そんな体験から苦痛を取り除くことが、人々に最もポジティブな影響を与えるつながりを作るための最短の道だったのです。 体験に 「追加」するつながり(新しい手段や代替の方法)は、多くの場合、体験の複雑さを増すだけで、永続的なつながりにはなり得ていないようです。

ヒューマン

素晴らしいつながりは、人を素晴らしい気分にさせる

「なにが良いつながりで、なにが悪いつながりか」という議論になったとき、私たちが彼らから引き出したのは、最高のつながりとは、最も人間的だと感じられるもの、つまり重要なのは、「リアル」のやりとりを反映している素晴らしい気分にさせるつながりであり、明らかにテクノロジーではないということでした。

彼らの意見のいくつかをご紹介しましょう。
「情報がとても具体的だったので、推測する代わりに自信が持てました」(推測というマイナスの排除)。
「自分を知ることができるようになりました」
「自分に磨きをかけられます」
「生産性向上だけでなく、何かを学ぶことができます」
「孤独を感じなくなりました」

しかしながら、必ずしも「人間味のないもの」=「最悪のつながり」ではありませんでした。最悪のつながりは、人間性の悪さを浮き彫りにするもの……、わたしたちが「責任から逃れ」、「その後ろに隠れることができる」ようになり、「侮辱を浴びせても平気」に、そして 「人間らしさを感じなくなる」ものだったのです。
逆説的ですが、テクノロジーによるつながりが、ポジティブで「リアル」な人間関係を反映していればいるほど、つながりは強くなるのです。

エネルギー

費やすより、得ることが多いポジティブ・ヒューマン・エネルギー。

次に私たちは、彼らに「未来の理想的なコネクテッド・ワールド」を想像し、描いてもらいました。そこには笑顔、一体感、手をつなぐこと、善良さなど、多くの共通点が見られました。逆に「未来の最悪なコネクテッド・ワールド」を描いてもらったところ、人々は壊れた世界、つまり文字通りの死や破壊、「世界を汚染する」ソーシャルな交流のイメージを描きました。
彼らのイメージのすべてに共通していたのはバランス感覚です。ポイントは、人とテクノロジーの交流において、人は交流に費やすエネルギーよりも、交流から得るポジティブ・ヒューマン・エネルギーの方が多いという点。
天秤が、交流に費やすエネルギーよりも、交流から得られるエネルギーの方が大きい方向に傾くときが、人間が必要とする「つながり」と、それが生み出す「不安」との間にある緊張(私たちの生存とストレスの間に横たわる葛藤)が解けるときなのです。

最後の点と点をつなげる。

このストレスとサバイバルの緊張関係を打破することで、「ポジティブ・ヒューマン・エネルギー」は、つながりを判断するリトマス試験紙となり、より良いつながりを生み出すための処方箋となり得るでしょう。

How painful was the pain eliminated? 解消すべき苦痛はどの程度だったか?

It wasn’t not that bad それほどひどくはなかった

It was a torture 苦痛そのものだった

To what degree was the experience “worth it” どの程度「価値ある」体験だったか?

Not worth it 価値がない

Totally worth it まったくもって価値がある

To what degree did people feel better about themselves? 人々はどの程度、気分が良くなったと感じたか?

I feel stressed ストレスを感じた

I feel great 気分が良い

12〜15=ポジティブ・ヒューマン・エネルギー
素晴らしい状態です。どのようにそのスケールを拡大するか考えてみましょう。
9〜11=ニュートラル
今あるものをベースに、何が改善できるかを見極めましょう。
0〜8=ネガティブ・ヒューマン・エネルギー
OK。私たちが、何を修正する必要があるでしょうか?

1. ポジティブ
つながることによって解消される苦痛はあるか?
(どの程度苦痛か?1「苦痛ではない」から5「拷問 」まで)

2. ヒューマン
つながった後、人々は自身についてどのように感じているか?
(程度は? 1「ストレスを感じる」から5「最高の気分」まで)

3. エネルギー
私のつながりは、人々にどんなエネルギーを与えているか?
(与えることと費やすことの度合い1「割に合わない」から5「大いに価値がある」まで)

Translated and edited from “Positive Human Energy: A New Model for Human Connection”: https://interbrand.com/thinking/positive-human-energy-a-new-model-for-human-connection/